問題
通貨以外のもので支払われる賃金も、原則として労働基準法第12条に定める平均賃金等の算定基礎に含まれるため、法令に別段の定めがある場合のほかは、労働協約で評価額を定めておかなければならない。
答え
○(正しい)
この問題のポイントは、
「通貨以外のものの評価額は、法令に別段の定めがある場合を除き、労働協約に定める」
という点です。
通貨以外のものによって支払われる賃金についても、一定の場合には賃金総額に算入する必要があります。
しかし、現物や利益などをそのままでは金額として扱うことができません。
そこで、通貨以外のものをいくらとして評価するのかを決める必要があり、その評価額について労働基準法施行規則第2条第2項が定めています。
この記事で分かること
- 「通貨以外のもの」で支払われる賃金とは何か
- なぜ現物などに評価額を設定する必要があるのか
- 評価額は誰がどのように定めるのか
- 労働基準法24条と施行規則2条の関係
- 「法令」と「労働協約」のどちらを確認すべきか
- 試験で狙われやすいポイント
まず押さえたい「通貨以外のもの」と賃金の関係
労働基準法では、賃金について原則として通貨で支払うことが求められています。
これがいわゆる「賃金支払の原則」の一つです。
労働基準法第24条第1項では、
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない
とされています。
ただし、一定の場合には例外が認められています。
そのため、労働契約や労働協約などに基づいて、一定のものが現物などで給付されるケースがあります。
ここで問題になるのが、
「通貨ではないものを、賃金としてどのように金額換算するのか」
という点です。
なぜ「評価額」を決める必要があるのか?
ここが今回の問題を理解するうえで重要な部分です。
例えば、労働者に対して通貨だけでなく、一定の現物が賃金として支払われているとします。
現金であれば、
3万円
のように金額が明確です。
一方、現物などの場合、
「この物はいくらの賃金として扱うのか?」
を決めなければなりません。
この金額が分からなければ、平均賃金などを計算するときに、その現物給付を算定基礎へ適切に反映できません。
そこで、通貨以外のものについて評価額を設定することになります。
労働基準法施行規則第2条がポイント
今回の出題根拠は、
労働基準法施行規則第2条第2項
です。
施行規則第2条第1項では、労働基準法第12条第5項の規定により、賃金の総額に算入すべきものについて定めています。
そして、第2項で、
前項の通貨以外のものの評価額は、法令に別段の定めがある場合の外、労働協約に定めなければならない。
とされています。
つまり、試験では次の流れを押さえておくことが重要です。
通貨以外のものが賃金に含まれる場合
↓
そのままでは金額として計算できない
↓
評価額が必要
↓
法令に別段の定めがなければ、労働協約に定める
という関係です。
「法令に定めがなければ労働協約」が重要
今回の肢で特に注意したいのが、
「法令に別段の定めがある場合のほかは、労働協約で評価額を定める」
という部分です。
ここは、単純に
「通貨以外のものの評価額は、必ず労働協約で決める」
と覚えてしまうと危険です。
施行規則第2条第2項には、
法令に別段の定めがある場合の外
という条件があります。
したがって、順番としては、
① 法令に別段の定めがあるか確認
↓
② そのような定めがなければ労働協約に定める
という整理になります。
この**「法令が先、なければ労働協約」**という構造を覚えておきましょう。
さらに重要|評価額が決まっていない場合はどうなる?
ここまで覚えると、次の疑問が出てきます。
「労働協約に評価額が定められていなかったらどうするの?」
この点についても、施行規則第2条に規定があります。
労働協約に定められた評価額が不適当と認められる場合や、そもそも評価額が法令または労働協約に定められていない場合には、都道府県労働局長が評価額を定めることができるとされています。
ここまで押さえておくと、則2条の構造がかなり見えやすくなります。
評価額の基本的な決め方
法令に定めがある
→ 法令による
法令に定めがない
→ 労働協約に定める
労働協約に定められていない、または評価額が不適当
→ 都道府県労働局長が評価額を定めることができる
という流れです。
労働基準法24条との関係を整理
今回の問題では、労働基準法第24条も一緒に確認しておくと理解が深まります。
第24条は「賃金の支払」について規定しています。
原則として賃金は、
- 通貨で
- 労働者本人に直接
- 全額を
支払わなければならないとされています。
ただし、通貨以外のもので支払うことについて、法令または労働協約に別段の定めがある場合には例外が認められています。
ここから今回の論点につながります。
つまり、
労働基準法24条
→ 賃金は原則として通貨払い
→ 一定の場合には通貨以外による支払いも可能
そして、
労働基準法施行規則2条
→ 通貨以外のものを賃金総額に算入する場合、その評価額をどうするか規定
という関係です。
「24条」と「則2条」を混同しない
社労士試験では、似た条文を横断して問われることがあります。
今回も、
労働基準法24条=賃金の支払方法
と、
施行規則2条=通貨以外のものの評価額
を分けて整理しておきたいところです。
特に、
「通貨以外で支払えるか」
と
「通貨以外のものをいくらとして評価するか」
は別の問題です。
支払方法
「通貨以外で支払うことができるのか?」
↓
労働基準法24条
評価方法
「通貨以外のものをいくらとして扱うのか?」
↓
労働基準法施行規則2条
この違いを押さえると、条文の役割がかなり整理しやすくなります。
平均賃金との関係にも注意
今回の問題では、通貨以外のものが平均賃金の算定基礎に関係する点もポイントです。
労働基準法第12条の平均賃金は、さまざまな労働基準法上の制度で計算の基礎として使われます。
そのため、賃金として支払われているものについて、単に「現物だから計算しない」としてしまうと、適切な金額を算定できない場合があります。
そこで、通貨以外のものについても、一定の場合には評価額を設定し、金額として扱うことになります。
つまり今回の問題は、
「現物でも賃金として扱われることがある」
という知識だけではなく、
「金額として扱うために評価額を定める」
というところまで理解することが重要です。
試験で狙われやすい「誰が定める?」問題
今回のような問題では、内容そのものよりも、
「誰が」「どのように」定めるのか
を入れ替えてくる可能性に注意しましょう。
今回の正しい整理は、
| 内容 | 原則 |
|---|---|
| 通貨以外のものの評価額 | 法令に別段の定めがなければ労働協約 |
| 労働協約の評価額が不適当 | 都道府県労働局長が定めることができる |
| 評価額が法令・労働協約に定められていない | 都道府県労働局長が定めることができる |
したがって、
「使用者が自由に評価額を決める」
とか、
「労働者の過半数代表者との書面による協定で定める」
などとされていたら、今回の則2条とは異なるので注意が必要です。
この問題のひっかけポイント
今回の肢は正しい文章ですが、試験では次のような部分が入れ替えられる可能性があります。
「労働協約」を別のものに変える
法令に別段の定めがある場合のほかは、労働協約に定める。
ここが重要です。
「労使協定」や「就業規則」などに置き換えられていたら、慎重に判断しましょう。
「法令に別段の定め」を落とす
単に、
「通貨以外のものの評価額は労働協約に定めなければならない」
とされていた場合も、条文の正確な内容とは異なります。
正しくは、
法令に別段の定めがある場合の外
という例外があります。
「評価額」と「支払額」を混同する
今回、労働協約で定めるのは、
通貨以外のものそのものを支払うことについてのルールではなく、そのものをいくらとして評価するか
という点です。
ここも問題文の言葉をしっかり読みましょう。
覚え方
この問題は、丸暗記するよりも、
「現物を金額に変換するためのルール」
と考えると覚えやすいです。
イメージとしては、
通貨以外の賃金
↓
金額がそのままでは分からない
↓
評価額が必要
↓
原則:労働協約
↓
法令・労働協約に評価額がない等の場合:都道府県労働局長
という流れです。
まとめ
今回の肢は**○(正しい)**です。
通貨以外のもので支払われる賃金についても、一定の場合には賃金の総額に算入する必要があります。
そのため、平均賃金などを計算する際には、通貨以外のものを金額として評価する必要があります。
その評価額について、労働基準法施行規則第2条第2項では、
法令に別段の定めがある場合を除き、労働協約に定める
とされています。
また、評価額が定められていない場合や、定められた評価額が不適当と認められる場合には、都道府県労働局長が評価額を定めることができるとされています。
試験対策として覚えておきたいポイント
通貨以外のものの評価額
→ 法令に別段の定めがなければ「労働協約」
そして、
労働協約に定めがない・評価額が不適当
→ 都道府県労働局長が定めることができる
ここは「誰が評価額を決めるのか」を問われやすいポイントとして押さえておきましょう。
出題根拠:労働基準法施行規則第2条第2項



