労働基準法では、健康上特に有害な業務について、時間外労働に一定の上限が設けられています。
今回は、「有害業務は1日10時間まで」と考えてよいのか、変形労働時間制との関係を確認します。
この記事で分かること
- 有害業務の時間外労働に関する上限
- 「1日10時間まで」という考え方がなぜ誤りなのか
- 変形労働時間制の場合の考え方
- 試験で注意したい「2時間」という数字
問題
労働基準法第32条の2等の規定によるいわゆる変形労働時間制により労働させる場合においても、同法第36条第6項第1号の規定により、該当の有害業務については、1日について10時間を超えて労働させてはならないと解されている。
答え
誤り
ポイント
この問題で重要なのは、
「1日の労働時間を10時間までに制限する」のではなく、「1日に延長して労働させる時間を2時間までに制限する」
という点です。
労働基準法第36条第6項第1号では、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日に延長して労働させる時間が2時間を超えないこととされています。
したがって、
有害業務は1日10時間まで
と一律に考えるのは誤りです。
有害業務は「2時間」がポイント
通常の法定労働時間は1日8時間です。
そのため、変形労働時間制を採用していない場合には、
8時間+2時間=10時間
というイメージになります。
しかし、変形労働時間制では、一定の要件のもとで特定の日に8時間を超える労働時間を設定することができます。厚生労働省も、変形労働時間制について、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度と説明しています。
そのため、健康上特に有害な業務についても、
「必ず1日10時間まで」
とはなりません。
変形労働時間制ではどう考える?
例えば、変形労働時間制によって、ある日の所定労働時間が10時間と設定されているとします。
この場合、健康上特に有害な業務については、そこからさらに延長して労働させる時間について2時間の制限があります。
つまり、
10時間+2時間=12時間
となる場合があります。
実際、平成11年3月31日付けの通達(基発第168号)に関連して、変形労働時間制を採用している場合には、その特定日の所定労働時間を超える部分についても有害業務の延長時間に関する制限が適用されると整理されています。過去問解説でも、この考え方から「特定日の所定労働時間が10時間の場合、12時間まで」とされています。
したがって、
有害業務=1日10時間まで
と覚えるのではなく、
有害業務=1日に延長できる時間は2時間まで
と覚えることが重要です。
「10時間」という数字に注意
社労士試験では、「10時間」という数字が出てくると、つい
有害業務 → 1日10時間まで
と結び付けてしまいがちです。
しかし、ここで問われているのは「1日の労働時間そのもの」ではありません。
覚えるべきなのは、
健康上特に有害な業務
↓
1日に延長して労働させる時間
↓
2時間を超えない
という関係です。
なお、厚生労働省の資料でも、有害業務の上限について「1日の法定労働時間に2時間を加えた時間」を基本として説明されています。
試験対策として覚えておきたいこと
この問題は、次のように整理すると覚えやすくなります。
有害業務
「1日10時間まで」ではない
↓
「1日に延長して労働させる時間は2時間まで」
ここが最大のポイントです。
変形労働時間制の場合には、もともとのその日の労働時間が8時間を超えることがあるため、「10時間」という絶対的な上限として考えないようにしましょう。
まとめ
労働基準法第36条第6項第1号では、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日に延長して労働させる時間が2時間を超えないこととされています。
これは、
「有害業務は1日10時間まで」
という意味ではありません。
変形労働時間制では、特定の日の所定労働時間が8時間を超える場合があるため、そこからさらに2時間まで延長できるという考え方になります。
したがって、本問の
「有害業務については、1日について10時間を超えて労働させてはならない」
という記述は誤りです。
この問題の暗記ポイント
有害業務 → 1日10時間ではなく「延長2時間」
ここを押さえておきましょう。
参考・根拠
愛知労働局「有害業務の労働時間の上限規制等について」
e-Gov法令検索「労働基準法」第36条第6項第1号
厚生労働省「労働時間・休日」
厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」



