問題
使用者は、産後1年を経過しない(労働基準法第65条による休業期間を除く。)女性を、高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務に就かせてもよい。
答え
正しい
ポイント
今回の問題は、産後1年を経過しない女性に対する危険有害業務の就業制限について問うものです。
女性労働基準規則第2条第1項第14号では、高さが5メートル以上で、墜落によって危害を受けるおそれのある場所での業務を、妊娠中の女性が就いてはならない業務として定めています。
一方、同条第2項では、産後1年を経過しない女性について就業を制限する業務を別に定めていますが、第14号の高所作業はその対象に含まれていません。
したがって、設問の高所作業については、産後1年を経過しない女性を就かせることができます。
この問題で押さえたいのは、妊娠中の女性と産後1年以内の女性では、危険有害業務の就業制限の範囲が異なるという点です。
この記事で分かること
- 労働基準法第64条の3が定める危険有害業務の就業制限
- 妊娠中の女性と産後1年以内の女性の違い
- 女性労働基準規則第2条第13号・第14号の比較
- 産後の女性について就業制限が適用される業務と申出の関係
- 第3条による妊産婦以外の女性への規制
- 社労士試験で混同しやすい「就業禁止」「申出による就業禁止」「規制対象外」の違い
1.労働基準法第64条の3は何を定めている?
労働基準法第64条の3は、妊娠中の女性や産後1年を経過しない女性などについて、危険有害業務への就業を制限する規定です。
同条第1項では、使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性を、重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所での業務など、妊娠・出産・哺育等に有害な業務に就かせてはならないと定めています。
この2つの期間にある女性は、同項において「妊産婦」とされています。
ただし、妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性について、すべての危険有害業務が同じように禁止されるわけではありません。
具体的にどの業務が就業制限の対象となるかは、女性労働基準規則第2条によって定められています。
妊娠中と産後で規制が異なる理由
妊娠中の女性については、妊娠の経過や胎児への影響などを考慮し、一定の危険有害業務への就業が制限されています。
一方、産後1年を経過しない女性についても保護の対象となりますが、就業制限の対象となる業務は、妊娠中の女性の場合と完全には一致しません。
そのため、試験対策では「妊産婦」という用語だけでまとめて覚えるのではなく、妊娠中と産後のそれぞれについて、どの業務が規制対象となるのかを確認する必要があります。
2.高さ5メートル以上の高所作業は、なぜ産後の女性なら就業できるのか?
女性労働基準規則第2条第1項第14号では、次の業務を妊娠中の女性が就いてはならない業務として定めています。
高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務
この規定では、単に高さが5メートル以上であることだけでなく、墜落によって労働者が危害を受けるおそれがあることも要件となっています。
そして、同条第2項では、産後1年を経過しない女性について就業制限の対象となる業務を定めています。
その対象は、第1項第1号から第12号まで及び第15号から第24号までです。
ここで注目したいのが、第13号と第14号が、産後1年以内の女性に対する就業制限の対象から除かれているという点です。
つまり、第14号の高所作業は、妊娠中の女性については就業制限の対象ですが、産後1年を経過しない女性については、同規則第2条による就業制限の対象にはなりません。
今回の問題は、この違いを正しく理解しているかを問うものです。
なお、これは高所作業が安全であるという意味ではありません。墜落防止措置など、ほかの法令に基づく安全対策まで不要になるわけではない点にも注意しましょう。
3.第13号と第14号の違いを整理する
女性労働基準規則第2条第1項第13号と第14号は、どちらも数字の「5メートル」が登場するため、混同しやすい規定です。
それぞれの内容を比較してみましょう。
| 号数 | 業務の内容 | 危険の種類 |
|---|---|---|
| 第13号 | 土砂が崩壊するおそれのある場所、又は深さが5メートル以上の地穴における業務 | 土砂の崩壊・地穴に関する危険 |
| 第14号 | 高さが5メートル以上の場所で、墜落により危害を受けるおそれのある場所における業務 | 高所からの墜落に関する危険 |
両者とも、妊娠中の女性については就業制限の対象となります。
一方、産後1年を経過しない女性については、いずれも第2条第2項に列挙された業務に含まれていません。
そのため、産後の女性に対する同条の就業制限という観点では、両者は共通しています。
「高さ」と「深さ」を取り違えない
試験では、数字だけを覚えていると、問題文の表現が変わったときに判断を誤る可能性があります。
- 第13号は、土砂の崩壊のおそれがある場所、又は深さが5メートル以上の地穴
- 第14号は、高さが5メートル以上の場所で墜落のおそれがあるところ
というように、数字だけでなく、危険の内容と場所の条件をセットで覚えておきましょう。
4.産後1年以内の女性なら、すべての危険有害業務に就業できる?
今回の問題で特に注意したいのが、この点です。
第14号の高所作業が産後1年以内の女性に対する就業制限の対象外だからといって、産後1年以内の女性について、すべての危険有害業務への就業が認められるわけではありません。
女性労働基準規則第2条第2項では、産後1年を経過しない女性についても、一定の危険有害業務を就業制限の対象としています。
ただし、対象となる業務の中には、本人から申出があった場合に限って就業が禁止されるものがあります。
ここで、次の3つの取扱いを区別しましょう。
① 就業させてはならない業務
規定の対象となる女性について、使用者はその業務に就かせることができません。
② 本人が申し出た場合に就業させてはならない業務
産後1年を経過しない女性について、一定の業務では、本人がその業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に、就業させることが禁止されます。
③ 産後の女性について就業制限の対象外となる業務
女性労働基準規則第2条第2項に列挙されていない業務は、同項による産後の女性の就業制限の対象にはなりません。
今回の第14号の高所作業は、この③に該当します。
この区別ができれば、「産後1年以内だから禁止」「本人が申し出たから禁止」といった単純な判断を避けられます。
5.産後の女性について申出が必要となる業務
女性労働基準規則第2条第2項ただし書では、産後1年を経過しない女性について、次の業務に関する特別な取扱いを定めています。
- 第2号から第12号まで
- 第15号から第17号まで
- 第19号から第23号まで
これらの業務については、産後1年を経過しない女性が、その業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限り、就業させることが禁止されます。
したがって、問題を解く際には、業務が第2条第2項の対象に含まれているかを確認するだけでなく、ただし書によって申出が必要とされているかも確認しなければなりません。
一方、今回の第14号は、第2項の対象業務に含まれていません。
そのため、今回の問題では、申出があったかどうかを判断するのではなく、第14号の業務が産後の女性に対する就業制限の対象に含まれていないことを理由として、正誤を判断します。
試験対策では「対象業務」と「申出要件」を分ける
産後1年以内の女性については、次の順序で考えると整理しやすくなります。
- 女性労働基準規則第2条第2項の対象業務に含まれているか。
- 対象業務に含まれる場合、ただし書による申出要件があるか。
- 問題文が、申出の有無や就業禁止の条件を正しく述べているか。
この順序で判断すれば、業務の種類と申出のルールを混同しにくくなります。
6.妊産婦以外の女性に対する就業制限も確認する
労働基準法第64条の3第2項では、同条第1項に規定する業務のうち、女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務について、妊産婦以外の女性にも規制を準用できるとしています。
この規定を受けて、女性労働基準規則第3条では、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性以外の女性について、就業制限の対象となる業務を定めています。
対象となるのは、第2条第1項第1号及び第18号の業務です。
つまり、妊産婦以外の女性についても、すべての危険有害業務が自由に認められるわけではありません。
ただし、今回の高所作業は第14号に該当するため、第3条が定める妊産婦以外の女性に対する就業制限の対象にも含まれていません。
このように、女性労働基準規則では、女性の状態に応じて就業制限の対象となる業務が区別されています。
7.今回の問題を条文から判断する
ここまでの内容を踏まえて、設問を改めて確認しましょう。
使用者は、産後1年を経過しない女性を、高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務に就かせてもよい。
判断の手順は次のとおりです。
① 業務の種類を特定する
問題文の業務は、女性労働基準規則第2条第1項第14号の高所作業です。
② 産後の女性に対する規定を確認する
同条第2項では、第1号から第12号まで及び第15号から第24号までを対象としており、第14号は含まれていません。
③ 結論を出す
第14号の高所作業は、産後1年を経過しない女性に対する同条第2項の就業制限の対象ではありません。
したがって、設問は正しい内容です。
このように、対象者と業務の号数を照合すれば、条文の細部まで暗記していなくても、規定の構造から判断しやすくなります。
まとめ
労働基準法第64条の3と女性労働基準規則では、妊娠中の女性や産後1年を経過しない女性などについて、危険有害業務への就業制限が定められています。
女性労働基準規則第2条第1項第14号では、高さが5メートル以上で、墜落によって危害を受けるおそれのある場所での業務を、妊娠中の女性が就いてはならない業務としています。
一方、同条第2項では、第14号の高所作業は産後1年を経過しない女性に対する就業制限の対象に含まれていません。
そのため、今回の問題は正しい内容です。
社労士試験では、次のポイントを押さえておきましょう。
- 妊娠中の女性:第14号の高所作業は就業禁止
- 産後1年以内の女性:第14号は第2条第2項による就業制限の対象外
- 第13号:土砂の崩壊のおそれがある場所、又は深さ5メートル以上の地穴
- 第14号:高さ5メートル以上で墜落のおそれがある場所
- 産後の女性:業務によっては本人の申出が就業禁止の条件となる
特に重要なのは、妊娠中の女性と産後1年以内の女性を同じ取扱いとして覚えないことです。対象となる女性、業務の種類、申出要件の3点を分けて確認することで、細かな数字や例外を問う問題にも対応しやすくなります。
出題根拠:労働基準法第64条の3第1項・第2項、女性労働基準規則第2条・第3条



