【労働基準法】1か月単位の変形労働時間制は育児を行う労働者にも適用できる?|18歳未満の者との違い

労働基準法

問題

1か月単位の変形労働時間制は、満18歳に満たない者及びその適用除外を請求した育児を行う者については適用しない。

答え

誤り

ポイント

誤りは、育児を行う者について、適用除外を請求すれば1か月単位の変形労働時間制が適用されなくなるとしている部分です。

労働基準法第60条第1項では、満18歳に満たない者について、1か月単位の変形労働時間制など、一定の労働時間に関する規定を適用しないと定めています。

一方、育児を行う者については、同項による適用制限はありません。

ただし、育児を行う者などに対しては、変形労働時間制を適用する際に、育児等に必要な時間を確保できるよう配慮する義務が使用者に課されています。

つまり、今回の問題では、次の2つを区別することが重要です。

  • 満18歳に満たない者:法律によって一定の労働時間制度の適用が制限される。
  • 育児を行う者:変形労働時間制の適用が一律に除外されるわけではなく、必要な時間を確保できるよう配慮が求められる。

この記事で分かること

  • 労働基準法第60条第1項で適用されない規定
  • 18歳未満の者に変形労働時間制が適用されない理由
  • 第60条第3項に定められた18歳未満の者に関する特例
  • 育児を行う労働者に対する配慮義務の内容
  • 「適用除外」と「配慮義務」の違い
  • 社労士試験で誤りの肢を見抜くための判断方法

1.労働基準法第60条第1項は何を定めている?

労働基準法第60条第1項は、満18歳に満たない者について、一定の労働時間に関する規定を適用しないことを定めています。

具体的には、次の規定が対象です。

制度・規定根拠条文
1か月単位の変形労働時間制第32条の2
フレックスタイム制第32条の3
1年単位の変形労働時間制第32条の4
1週間単位の非定型的変形労働時間制第32条の5
時間外・休日労働に関する規定第36条
労働時間及び休憩の特例第40条
高度プロフェッショナル制度第41条の2

このように、満18歳に満たない者については、変形労働時間制だけでなく、複数の労働時間に関する規定が適用されません。

今回の問題で問われている1か月単位の変形労働時間制も、第60条第1項に列挙された規定の一つです。

したがって、満18歳に満たない者について、同制度を適用しないとする問題文の前半は正しい内容です。

なぜ18歳未満の者には適用制限があるのか?

変形労働時間制は、一定の要件のもとで、特定の日や週の労働時間を通常の法定労働時間より長く設定できる制度です。

例えば、1か月単位の変形労働時間制では、対象期間を平均して週の労働時間が法定労働時間を超えないようにすることなどを条件に、特定の日や週について労働時間を配分できます。

しかし、満18歳に満たない者については、労働者の年少者保護という観点から、こうした制度の適用が制限されています。

このため、一般の労働者と同じように変形労働時間制を適用できるわけではありません。

社労士試験では、制度の仕組みだけでなく、年少者について特別な取扱いが設けられている点も押さえておきましょう。


2.18歳未満の者には、すべての変形労働時間制が適用されない?

ここで、もう一歩踏み込んで確認しておきたいのが、労働基準法第60条第3項です。

第60条第1項では、満18歳に満たない者について一定の規定を適用しないと定めていますが、第3項では、一定の条件のもとで労働時間を延長できる特例を設けています。

例えば、満15歳以上で満18歳に満たない者については、法律に定められた条件を満たす場合に、1日の労働時間を10時間まで延長できる取扱いなどがあります。

また、一定の範囲内で、第32条の2や第32条の4などの規定の例によって労働させることができる場合もあります。

ただし、これらは第60条第3項に定められた特例であり、一般の労働者と同じ条件で変形労働時間制を自由に適用できるという意味ではありません。

第60条第1項と第3項の関係

規定内容
第60条第1項満18歳に満たない者について、一定の労働時間に関する規定を適用しない
第60条第3項一定の年齢・条件などを満たす場合に、法律で定める特例を認める

試験では、第1項だけを覚えていると、第3項に関する問題で混乱する可能性があります。

ただし、今回の問題の正誤を判断するうえでは、第3項の詳細よりも、第60条第1項による適用制限の対象に育児を行う者は含まれていないという点が重要です。


3.育児を行う者は変形労働時間制の適用除外になる?

それでは、育児を行う労働者について考えてみましょう。

問題文では、育児を行う者が適用除外を請求した場合、1か月単位の変形労働時間制を適用しないとしています。

しかし、労働基準法第60条第1項には、育児を行う者について、変形労働時間制の適用を除外するという規定はありません。

したがって、育児を行う者が適用除外を請求したという理由だけで、第60条第1項に基づき1か月単位の変形労働時間制が適用されなくなるわけではありません。

ここで注意したいのは、育児を行う労働者への配慮が不要という意味ではないことです。

育児を行う労働者については、別の規定によって、育児に必要な時間を確保できるよう配慮することが使用者に求められています。

つまり、制度の適用そのものを除外することと、制度を適用する際に労働者の事情に配慮することは、別の問題なのです。


4.労働基準法施行規則第12条の6による配慮義務

育児を行う者への配慮について定めているのが、労働基準法施行規則第12条の6です。

同条では、使用者が労働基準法第32条の2、第32条の4又は第32条の5の規定によって労働者を働かせる場合、特別の配慮を要する者について、育児等に必要な時間を確保できるよう配慮しなければならないとしています。

対象となる者には、次のような人が含まれます。

  • 育児を行う者
  • 老人等の介護を行う者
  • 職業訓練又は教育を受ける者
  • その他、特別の配慮を要する者

この規定は、変形労働時間制を適用する際に、労働者の生活上の事情にも目を向けることを求めるものです。

例えば、育児を行う労働者については、育児に必要な時間を確保できるよう配慮する必要があります。

ただし、この規定があるからといって、育児を行う者に対して変形労働時間制を適用できなくなるわけではありません。

配慮義務は適用除外とは違う

ここが今回の問題の核心です。

配慮義務は、制度を適用することを前提に、労働者が必要な時間を確保できるよう配慮するものです。

これに対して、適用除外は、法律上の要件に該当する場合に、特定の制度や規定を適用しないという取扱いです。

両者は似ているように見えますが、法的な意味は異なります。

育児を行う者については、施行規則第12条の6による配慮義務が設けられているのであって、第60条第1項による適用制限の対象となっているわけではありません。


5.「適用除外」と「配慮義務」を比較して覚える

今回の論点は、次のように比較すると理解しやすくなります。

比較項目満18歳に満たない者育児を行う者
関係する規定労働基準法第60条第1項労働基準法施行規則第12条の6
基本的な取扱い一定の労働時間に関する規定を適用しない育児等に必要な時間を確保できるよう配慮する
変形労働時間制の適用原則として第60条第1項の適用制限を受ける配慮義務があることを理由に一律に適用除外となるわけではない
試験での注意点適用されない規定と特例を区別する配慮義務を適用除外と混同しない

この比較で大切なのは、両者とも労働時間に関する特別な取扱いがあるものの、その内容が異なるということです。

満18歳に満たない者については、法律によって一定の規定の適用が制限されています。

一方、育児を行う者については、制度の適用を一律に除外するのではなく、必要な時間を確保できるよう配慮することが求められています。


6.社労士試験で狙われるのは「規定のすり替え」

今回の問題では、前半と後半で異なる規定の内容が組み合わされています。

前半は、労働基準法第60条第1項に基づく満18歳に満たない者への適用制限です。

後半は、育児を行う者について適用除外を請求できるとする内容ですが、そのような取扱いを第60条第1項が定めているわけではありません。

このように、試験では、実際に存在する規定の内容を別の対象者に当てはめたり、配慮義務を適用除外に置き換えたりすることで、誤りの肢が作られることがあります。

問題文を分解して判断する

今回の肢は、次のように分けて考えると判断しやすくなります。

① 満18歳に満たない者には、1か月単位の変形労働時間制を適用しない。

これは正しい内容です。

② 育児を行う者が適用除外を請求した場合も、同制度を適用しない。

これは誤りです。育児を行う者について、第60条第1項によるそのような適用除外の規定はありません。

したがって、肢全体としては誤りとなります。

複数の内容が一つの文章に含まれている場合は、文章全体を漠然と読むのではなく、要素ごとに分解して判断することが重要です。


7.今回の論点を覚えるための整理

今回の内容は、次の3点に分けて覚えるのがおすすめです。

① 満18歳に満たない者

労働基準法第60条第1項により、1か月単位の変形労働時間制など、一定の労働時間に関する規定が適用されません。

② 育児を行う者

育児を行う者について、同項による変形労働時間制の適用除外は定められていません。

③ 使用者の配慮義務

労働基準法施行規則第12条の6により、育児を行う者などが育児等に必要な時間を確保できるよう、使用者には配慮が求められています。

この3点を関連付けて理解しておけば、単に条文番号や用語を暗記するよりも、出題の仕方が変わった場合に対応しやすくなります。


まとめ

労働基準法第60条第1項では、満18歳に満たない者について、1か月単位の変形労働時間制やフレックスタイム制など、一定の労働時間に関する規定を適用しないと定めています。

一方、育児を行う者については、変形労働時間制の適用を一律に除外する規定はありません。

労働基準法施行規則第12条の6では、育児を行う者や介護を行う者などについて、育児等に必要な時間を確保できるよう配慮することを使用者に求めています。

したがって、今回の問題は、満18歳に満たない者への適用制限と、育児を行う者への配慮義務を混同しているため、誤りです。

社労士試験では、次の違いを押さえておきましょう。

満18歳に満たない者:一定の規定を適用しない

育児を行う者:必要な時間を確保できるよう配慮する

このように、適用除外と配慮義務を区別することが、今回の問題を正確に解くポイントです。

出題根拠:労働基準法第60条第1項・第3項、労働基準法施行規則第12条の6