【労働基準法】社宅を提供しなかった場合、労働契約を解除できる?|労働条件の明示と福利厚生施設

労働基準法

問題

社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合においては、社宅を供与すべき旨の条件は労働基準法第15条第1項の「労働条件」に含まれないから、労働契約の締結に当たり同旨の条件を付していたにもかかわらず、社宅を供与しなかったときでも、同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできない。

答え

正しい

ポイント

判断のポイントは、社宅が単なる福利厚生施設とみなされるかどうかです。

社宅が単なる福利厚生施設にすぎない場合、社宅を提供するという条件は、労働基準法第15条第1項にいう「労働条件」には含まれません。

そのため、約束していた社宅が提供されなかったとしても、そのことを理由に同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできません。

一方、社宅を利用する利益が労働基準法第11条にいう「賃金」に該当する場合は、取扱いが異なります。

この記事で分かること

  • 労働基準法第15条第2項による労働契約の解除
  • 社宅の提供が労働条件に含まれる場合と含まれない場合
  • 社宅の利用利益が賃金に該当するときの取扱い
  • 社労士試験で押さえておきたい判断の分かれ目

労働条件が事実と異なる場合、労働契約を解除できる

労働基準法第15条第1項では、使用者は労働契約を締結する際に、労働者に対して賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならないと定めています。

さらに、同条第2項では、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できるとされています。

例えば、契約時に明示された賃金や労働時間などの条件が、実際には異なっていた場合が考えられます。

ただし、ここで注意したいのは、約束した内容が実現されなかった場合に、どのような条件でも労働基準法第15条第2項による解除が認められるわけではないという点です。

今回の問題では、社宅の提供が労働条件に該当するかどうかが問われています。

社宅が単なる福利厚生施設の場合

会社が労働者に社宅を提供する場合、その目的や性質はさまざまです。

社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合には、社宅を提供するという条件は、労働基準法第15条第1項にいう労働条件には含まれないとされています。

したがって、労働契約の締結時に社宅を提供する旨の条件が付されていたとしても、実際に社宅が提供されなかったことを理由として、同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできません。

ここで大切なのは、社宅を提供する約束があったかどうかだけで判断するのではなく、社宅がどのような性質を持つものなのかを確認することです。

社宅の利用利益が賃金に当たる場合は取扱いが異なる

一方、社宅を利用することによって労働者が受ける利益が、労働基準法第11条にいう賃金に該当する場合には、結論が異なります。

この場合、社宅を提供するという条件は、労働基準法第15条第1項にいう労働条件に含まれます。

そのため、社宅を提供する旨が明示されていたにもかかわらず、実際には提供されなかった場合には、同条第2項による労働契約の解除が問題となります。

つまり、社宅の提供については、次のように整理できます。

社宅の性質労働基準法第15条第2項の取扱い
単なる福利厚生施設とみなされる場合社宅を提供しなかったことを理由とする同項による解除権は行使できない
社宅の利用利益が賃金に該当する場合労働条件に含まれるため、同項の適用がある

この違いを押さえることが、今回の問題を解くうえで重要です。

試験で間違えないためのポイント

今回の問題では、社宅を提供しなかったという事実だけを見ると、労働契約の解除が認められそうに感じるかもしれません。

しかし、労働基準法第15条第2項による解除を考える際には、明示された内容が同条第1項の「労働条件」に該当するかどうかを確認する必要があります。

試験対策では、次の2つを区別して覚えておきましょう。

  • 社宅が単なる福利厚生施設である場合:労働条件に含まれず、同条第2項による解除権は行使できない。
  • 社宅の利用利益が賃金に該当する場合:労働条件に含まれ、同条第2項の適用がある。

特に、問題文に「単なる福利厚生施設とみなされる場合」と書かれていたら、この条件を見落とさないようにしましょう。

労働基準法第11条の「賃金」との関係

社宅の提供と労働契約の解除を考える際には、労働基準法第15条だけでなく、同法第11条の「賃金」の定義も重要になります。

労働基準法第11条では、賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうと定めています。

ここで注意したいのは、賃金に該当するかどうかは、金銭で支払われているかどうかだけでは判断できないという点です。社宅のように、労働者が金銭以外の形で利益を受ける場合でも、その利益が賃金に該当することがあります。

社宅が単なる福利厚生施設である場合

社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合、社宅を提供するという条件は、労働基準法第15条第1項の「労働条件」には含まれないとされています。

そのため、契約時に社宅を提供すると約束されていたにもかかわらず、実際には提供されなかった場合でも、そのことを理由として同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできません。

社宅の利用利益が賃金に該当する場合

一方、社宅を利用することによって労働者が受ける利益が、労働基準法第11条の賃金に該当する場合は、取扱いが異なります。

この場合、社宅を提供するという条件は、労働基準法第15条第1項の「労働条件」に含まれます。

したがって、その条件が明示されていたにもかかわらず、実際には社宅が提供されなかった場合には、同条第2項による労働契約の解除が問題となります。

ただし、解除できるかどうかは、明示された労働条件と実際の状況が相違しているかどうかを踏まえて判断します。

第11条と第15条の関係を整理

ここまでの内容を整理すると、次のようになります。

条文規定の内容今回の論点との関係
労働基準法第11条賃金の定義社宅の利用利益が賃金に該当するかを考える際の基準
労働基準法第15条第1項労働条件の明示社宅の提供条件が労働条件に含まれるかが問題となる
労働基準法第15条第2項明示された労働条件が事実と相違する場合の即時解除社宅の提供条件が労働条件に含まれる場合に適用が問題となる

つまり、第11条は「社宅の利用利益が賃金に当たるか」という判断に関係し、第15条は「明示された条件と実際の状況が異なる場合に、労働契約を解除できるか」という問題に関係します。

この2つの条文を結び付けて理解することが、今回の問題を正確に解くポイントです。

試験対策では、社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合と、社宅の利用利益が賃金に該当する場合を区別して覚えておきましょう。

まとめ

労働基準法第15条第2項では、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できるとされています。

ただし、社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合には、社宅を提供するという条件は同条第1項の労働条件に含まれません。そのため、社宅が提供されなかったとしても、同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできません。

これに対し、社宅の利用利益が労働基準法第11条の賃金に該当する場合には、社宅を提供する条件は労働条件に含まれ、同条第2項の適用があります。

社労士試験では、社宅が単なる福利厚生施設なのか、賃金に該当する利益なのかという違いを正確に押さえておきましょう。

出題根拠:労働基準法第15条第2項、昭和23年11月27日基収第3514号