【労働基準法】下請負人が自ら作業していても「労働者」ではなく「事業主」となる場合|社労士試験

労働基準法

労働基準法では、「労働者」に該当するかどうかが重要なポイントになります。

では、個人である下請負人が、自分自身で実際に作業をしている場合、その人は必ず「労働者」になるのでしょうか。

今回は、令和2年の社労士試験で出題された問題をもとに、下請負人と注文主との関係を確認します。

この記事で分かること

  • 労働基準法における「労働者」の考え方
  • 下請負人が「事業主」とされるケース
  • 自分自身が作業していても労働者とは限らない理由
  • 「請負関係」と「労働関係」の違い

問題

下請負人が、その雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するとともに、当該業務を自己の業務として相手方(注文主)から独立して処理するものである限り、注文主と請負関係にあると認められるから、自然人である下請負人が、たとえ作業に従事することがあっても、労働基準法第9条の労働者ではなく、同法第10条にいう事業主である。

答え

正しい

ポイント

この問題で重要なのは、

「下請負人が自分で作業しているかどうか」だけでは判断しない

ということです。

下請負人が、

  • 自分が雇用する労働者の労働力を自ら直接利用している
  • 請け負った業務を自己の業務として処理している
  • 注文主から独立して業務を処理している

という関係にある場合、注文主との関係は「請負関係」とされます。

そのため、自然人である下請負人が実際に作業をすることがあっても、注文主との関係では労働基準法第9条の「労働者」ではなく、第10条にいう「事業主」とされます。

そもそも「労働者」とは?

労働基準法第9条では、「労働者」を、

事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者

としています。

つまり、誰かの事業に「使用されて」働く関係にあることが、労働者性を考えるうえで重要になります。

一方、請負関係では、注文主から独立して、自らの業務として仕事を処理します。

ここが大きな違いです。

登場人物を整理すると分かりやすい

この問題では、3人の関係をイメージすると理解しやすくなります。

① 注文主

仕事を発注する側です。

② 下請負人

注文を受けて業務を請け負う側です。

この下請負人は自然人、つまり個人でありながら、自分自身だけでなく、労働者を雇用して仕事を行っています。

③ 下請負人が雇用する労働者

下請負人との間に雇用関係があります。

関係を整理すると、

注文主 ← 請負関係 → 下請負人

下請負人 ← 雇用関係 → 雇用する労働者

となります。

ここで、下請負人と注文主との間に雇用関係があるわけではありません。

「自分で作業している=労働者」ではない

この問題で最も注意したいのがここです。

下請負人自身が現場で作業していると、

「実際に働いているのだから労働者では?」

と考えてしまいそうになります。

しかし、労働者に該当するかどうかは、実際に作業をしているという事実だけで決まるわけではありません。

注文主との関係が、

注文主から指揮命令を受けて働く関係なのか

それとも、

注文主から独立して、自分の業務として請け負った仕事を処理する関係なのか

を見る必要があります。

今回の問題では後者です。

そのため、下請負人自身が作業に従事することがあっても、注文主との関係では「労働者」ではなく「事業主」とされます。

「請負関係」と「労働関係」の違い

ここは試験対策として整理しておきましょう。

請負関係労働関係
仕事をする人請負人労働者
相手方との関係独立して業務を処理使用されて労働する
業務の位置づけ自己の業務相手方の事業に使用される
本問の下請負人こちら該当しない

本問では、下請負人が「自己の業務として注文主から独立して処理する」とされているため、注文主との関係は請負関係となります。

労働基準法第10条との関係

ここも細かいですが、社労士試験では押さえておきたいところです。

労働基準法第10条では「使用者」について、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者と定義しています。

したがって、本問の下請負人は、注文主との関係では労働者ではなく、事業主として位置づけられることになります。

つまり、

下請負人自身が作業している

↓

それだけで労働者になるわけではない

↓

注文主から独立して自己の業務として処理している

↓

注文主との関係は請負関係

↓

下請負人は事業主

という流れです。

試験対策として覚えておきたいポイント

この問題では、次の2点をセットで覚えておくと整理しやすくなります。

① 自分で作業していても、それだけで労働者とはならない

「実際に作業している」という事実だけで判断しないことが重要です。

② 注文主から独立して自己の業務として処理している

ここが本問の決め手です。

独立して自己の業務として処理 → 請負関係 → 事業主

という流れを押さえておきましょう。

この問題のひっかけポイント

試験では、

「下請負人が自ら作業している」

という部分だけを見ると、労働者のように感じてしまいます。

しかし、本問ではその後に、

「自己の業務として注文主から独立して処理」

とあります。

この部分が重要です。

「自ら作業している」より「注文主から独立している」ことに注目する。

これが、この問題を解くときのポイントです。

まとめ

下請負人が、自ら雇用する労働者の労働力を利用しながら、請け負った業務を自己の業務として注文主から独立して処理している場合、注文主との関係は請負関係とされます。

そのため、自然人である下請負人が自ら作業に従事することがあっても、それだけで労働基準法第9条の「労働者」となるわけではありません。

本問では、下請負人は注文主との関係では「事業主」とされるため、記述は正しいと判断します。

この問題の暗記ポイント

自ら作業している=労働者、ではない

注文主から独立して自己の業務として処理=請負関係

この2つを押さえておきましょう。

参考・根拠

  • 労働基準法第9条・第10条
  • 昭和63年3月14日基発第150号・婦発第47号に示された下請負人に関する取扱い
  • 令和2年度 社会保険労務士試験「労働基準法及び労働安全衛生法」問1