【労災保険法】複数事業労働者の平均賃金相当額|離職している場合の算定方法

労働者災害補償保険法

複数の事業場で働く「複数事業労働者」については、労災保険の給付基礎日額をどのように算定するのかが重要になります。

今回は、遅発性疾病の診断が確定した日に、災害発生事業場をすでに離職している場合の平均賃金相当額の算定方法について確認します。

この記事で分かること

  • 複数事業労働者の平均賃金相当額の原則
  • 遅発性疾病の場合の算定基準日
  • 災害発生事業場を離職している場合の特例的な扱い
  • 「診断確定日」と「離職日」の違い

問題

複数事業労働者については、その疾病が業務災害による遅発性疾病である場合で、その診断が確定した日において、災害発生事業場を離職している場合の当該事業場に係る平均賃金相当額の算定については、災害発生事業場を離職した日を基準に、その日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日をいう。)以前3か月間に災害発生事業場において支払われた賃金により算定し、当該金額を基礎として、診断によって当該疾病発生が確定した日までの賃金水準の上昇又は変動を考慮して算定する。

答え

○(正しい)

この問題のポイントは、

「診断確定日」ではなく「災害発生事業場を離職した日」を基準にする

という点です。

原則は「算定事由発生日」以前3か月

まず、複数事業労働者の平均賃金相当額について、原則を確認します。

原則として、算定期間は、

  • 傷病等が発生した日
  • 診断によって疾病の発生が確定した日

などの「算定事由発生日」以前3か月間です。

賃金の締切日がある場合には、事業場ごとに算定事由発生日から直近の賃金締切日を基準として算定します。

したがって、通常は、

算定事由発生日
↓
その日以前3か月間の賃金

という形で考えます。

今回は「離職した日」が基準になる

ところが、本問には次の条件があります。

  • 疾病が遅発性疾病である
  • 診断が確定した日に、災害発生事業場を離職している

この場合、災害発生事業場に係る平均賃金相当額は、災害発生事業場を離職した日を基準として算定します。

つまり、

離職した日
↓
その日以前3か月間に災害発生事業場で支払われた賃金
↓
平均賃金相当額を算定

という流れです。

ここが本問の最大のポイントです。

「診断確定日」と「離職日」を比較する

試験では、この2つを区別して覚えておくと分かりやすくなります。

原則本問のケース
基準となる日算定事由発生日災害発生事業場を離職した日
基準期間その日以前3か月離職した日以前3か月
ポイント診断確定日等遅発性疾病+診断確定日に離職

したがって、

「遅発性疾病だから必ず離職日基準」

と覚えるのではなく、

「遅発性疾病で、診断確定日に災害発生事業場を離職している場合」

という条件までセットで覚えることが重要です。

離職後の賃金水準の変動も考慮する

本問では、離職日以前3か月間の賃金をそのまま使って終わりではありません。

その金額を基礎として、

診断によって疾病発生が確定した日までの賃金水準の上昇または変動

を考慮して算定します。

イメージすると、

離職日以前3か月の賃金

↓

平均賃金相当額を算定

↓

診断確定日までの賃金水準の上昇・変動を考慮

となります。

これは、離職後に賃金水準が変化している可能性を考慮するための仕組みです。

なぜ離職日を基準にする?

遅発性疾病では、疾病の原因となる業務に従事した時期と、実際に疾病が発症・診断される時期との間に時間差が生じることがあります。

そのため、診断確定時には、すでに原因となった業務に従事していた事業場を離職しているケースがあります。

厚生労働省も、疾病の発生のおそれのある作業に従事した事業場を離職している場合には、原則として、その最後の事業場を離職した日以前3か月間の賃金を基礎として給付基礎日額を算定する取扱いを示しています。

試験で注意したいポイント

この問題では、次のような置き換えに注意しましょう。

正しい

遅発性疾病+診断確定日に災害発生事業場を離職

↓

災害発生事業場の離職日を基準

間違えやすい考え方

診断確定日以前3か月の賃金を使う

今回のケースでは、この考え方ではありません。

また、

「複数事業労働者だから離職日基準」

とするのも正確ではありません。

あくまで、本問のような遅発性疾病で、診断確定日に災害発生事業場を離職している場合の取扱いです。

この問題から覚えておきたいこと

細かい文章をそのまま暗記するより、次の対比で覚えるのがおすすめです。

原則

算定事由発生日以前3か月

本問

災害発生事業場の離職日以前3か月

さらに、

離職日以前3か月の賃金を基礎にする
+
診断確定日までの賃金水準の上昇・変動を考慮

というところまで押さえておきましょう。

まとめ

複数事業労働者の平均賃金相当額は、原則として算定事由発生日以前3か月間の賃金を基礎として算定します。

しかし、業務災害による遅発性疾病について、診断が確定した日に災害発生事業場をすでに離職している場合には、その事業場については災害発生事業場を離職した日を基準とします。

そして、

離職日以前3か月間の賃金を基礎に算定
→ 診断確定日までの賃金水準の上昇・変動を考慮

という流れになります。

試験対策

原則:算定事由発生日以前3か月

本問:災害発生事業場の離職日以前3か月

この違いを押さえておきましょう。

参考・根拠

  • 厚生労働省「複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について」(令和2年8月21日基発0821第2号)
  • 厚生労働省「遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額について」
  • 厚生労働省「遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額の在り方」